新しく犬を家族に迎えたら、まず取り組むべきしつけはトイレトレーニングです。しかし、「トイレの場所を覚えてくれない」「トイレのしつけ方がわからない」といったお悩みは、多くの犬の飼い主さんが抱えているようです。
本記事では、獣医師視点でのトイレトレーニングの正しい方法と、失敗したときの対処法を解説します。愛犬がトイレ上手になれば飼い主さんとの信頼度も深まり、今後長く一緒に暮らす時間がより楽になります。本記事を参考に、根気よくトレーニングを続けましょう。
事前の準備:犬のトイレグッズ
トイレトレーニングは、犬を迎えたその日からスタートです。事前にトイレグッズを用意しておきましょう。
犬に「トイレの場所はここだよ」と教えて、場所を覚えてもらうことが重要です。排泄してほしい場所に下記グッズを設置して、根気よくしつけをしていきましょう。

サークル
サークルは柵で囲って空間を区切り、トイレの場所を理解しやすくします。サークル内に「ベッド」と「トイレ」を分けて配置することで、犬の「自分の寝る場所を汚したくない」という本能を刺激し、トイレの場所を認識しやすくします。
犬は排泄前にその場でくるくると回る習性があるため、身体の2〜3倍ある大きさのサークルを選びましょう。

トイレトレー
トイレトレーは、トイレシートがずれないよう固定するほか、段差ができることで犬がトイレの場所を認識しやすくなります。トイレシートから尿が漏れてしまってもトイレトレーがキャッチしてくれるので、床が汚れません。

トイレシート(ペットシーツ)
トイレシートは尿を吸収して、清潔に保つための消耗品です。足裏が濡れることを極端に嫌う犬も多いため、吸水性が高く表面がすぐにサラサラになるタイプを選ぶと、トイレへの不快感を軽減できます。
また子犬は排泄回数が多いため、排泄物をそのままにしておくと踏んで足が汚れてしまうことがあります。トイレシートを何枚か重ねておき、汚れたシートだけを交換していくと便利です。
犬のトイレトレーニングの5つのポイント
トイレグッズを準備しただけでは、犬はなかなかトイレで排泄してくれません。トイレ環境を整えた上で、愛犬にトイレの場所を教えてあげることが大事です。
犬をお迎えしたら、速やかにトイレトレーニングのしつけを始め、根気よく続けていきましょう。
1. トイレのタイミングを予測する
犬には排泄しやすいタイミングがあります。その子によっても異なるため、よく観察して予測しましょう。
- 寝起き
- 水を飲んだ後
- 食後
- 運動後
2. トイレのサインを見逃さない
犬は排泄をしたいタイミングになるとそわそわした行動をし始めます。トイレのサインなので見逃さないようにしましょう。
- 床の匂いをクンクン嗅ぐ
- その場をクルクル回る
- ソワソワする(動きが速くなる、左右に往復する)
3. 歩かせてトイレに誘導する
トイレのサインが出たら、速やかにサークル内のトイレシートへ連れて行きます。
抱き上げると排泄感が消えることがあるため、できるだけ歩かせて誘導しましょう。
4. 排泄するまで待つ
排泄するまでそのまま10〜15分ほど様子を見守りましょう。
排泄中に「ワンツー、ワンツー」など、決まった言葉(コマンド)を添えることで、言葉と排泄行為がリンクし、将来的に合図だけで排泄を促す「条件付け」が可能になります。
排泄しなかった場合
一度サークルから生活空間に戻し、再び様子を見守りましょう。トイレをしたがるサインが見られたら、再びトイレスペースに移動させて10〜15分ほど様子を見ましょう。
5. 成功したらその場で褒める
シートの上で排泄ができたら、終わった直後(3秒以内)に褒めておやつなどのご褒美をあげましょう。犬に「ここで排泄すると良いことがあった」という良い印象を与えることが大事です。
排泄が終わってから「3秒以内」という即時性が学習効率をアップします。また、この成功体験を繰り返すことでトイレの場所を覚えるようになります。
トイレのしつけ成功のコツ
寝る場所とトイレを離す
犬は本来、自分の寝床(パーソナルスペース)を汚したくないという強い本能を持っています。ケージ内に設置する場合は、寝床とトイレを可能な限り離し、仕切りを作るなどして明確に区別させましょう。
トイレは静かで安心できる場所に
人がよく行き来する場所や大きな音の出る家電の近くは避けてください。排泄中に驚くと、その場所を「怖い場所」と認識し、寄り付かなくなる原因になります。静かで落ち着いた場所を選びましょう。
トイレ付近から布類を排除
犬は柔らかいものの上で排泄したがる傾向があります。犬にとって、ラグとトイレシートの踏み心地は区別は難しく、ラグの上にトイレシーツが敷かれているとラグの上で排泄してしまう可能性があります。トイレの近くからラグなどの布類を排除したり、トイレトレーを使って踏み心地や高低差に判かを加えるなど、トイレとそれ以外の場所が区別できる環境を整えてあげましょう。
子犬と成犬のトイレトレーニングの違い

子犬と成犬ではトイレのしつけのアプローチが異なります。それぞれに合ったトイレトレーニングを行いましょう。
子犬の場合
子犬は膀胱が小さく、排泄を我慢するための括約筋も未発達です。
そのため、トイレの回数が成犬より多く、1日10回以上することもあります。「我慢させる」のではなく、排泄のタイミングに「飼い主が先回りしてトイレへ移動させる」ことが基本です。
- 集中力が短いため、一度のトレーニングは短時間にし、成功体験を積み重ねることに専念しましょう。
- 排泄中に「ワンツー、ワンツー」など排泄を促す言葉をかけてみましょう。言葉と排泄行為をリンクさせることで、将来的に自宅以外でのトイレの際も、合図で排泄を促せるようになります。
- 何度かトイレに連れて行くことを繰り返したら、トイレのケージを開けて、子犬が自分でトイレシーツに行けるようにしましょう。
成犬の場合
成犬から迎える場合もトイレのトレーニングは必要です。成犬はすでに自分なりの「トイレのルール」ができあがっている場合が多く、今までどんな場所で排泄していたかがポイントになります。「習慣の上書き」が必要になるため、子犬よりもしつけが大変なことが多いです。根気よくトレーニングしていきましょう。
- まずは、新しい環境に慣れてもらうところから始めましょう。ハウス、ケージ、サークルで囲んだ場所、クッションベッドなどを用意して専用の場所を作ります。
- 外で排泄をすることが習慣となっている犬もいるため、室内でのトイレトレーニングをする場合は時間をかけて行ないましょう。
トイレを失敗したときの対処法

トイレの場所を教えたからといって愛犬がすぐに覚えてくれるわけではありません。何度か失敗をしてしまう場合も、決して叱らないようにしてください。なぜ失敗してしまうのか原因を探り対策を考えましょう。
叱ることはNG
叱られると犬は「排泄場所が悪かった」のではなく、「排泄すること自体が悪いことだ」と誤解してしまい、飼い主の見ていない場所で隠れてするようになったり、排泄を我慢してしまったり、便を食べて隠そうとする(食糞)リスクが高まります。
トイレを失敗した場合は、騒がない・叱らない・罰を与えないを鉄則に、静かに片付けましょう。
トイレ以外の場所で粗相をしてしまう
いつも同じ場所で粗相をしてしまう場合は、犬がその場所をトイレと認識しているか、排泄しやすい場所になっている可能性があります。
<対象法>
- その場所に「ニオイ」を残さないように完全に消臭する
- その場所に物を置く、その場所に行けないようガードするなど物理的に遮断する
トイレシートからはみ出してしまう
トイレの場所には行くが、トイレシートの端っこではみ出してしまうという「惜しい」失敗です。トイレシートの真ん中で排泄するよう促してみましょう。
<対象法>
- 大きなトイレシートを用意して、犬を真ん中に誘導する
- 徐々にトイレシートの範囲を狭めて、真ん中を狙えるようにする
- シートからはみ出さなかった場合のみ褒めるようにする
トイレに行っても排泄をしてくれない
犬がまだその場所をトイレと認識していない可能性があります。まずはその場所で排泄をする経験が必要です。
<対象法>
- 頻繁にトイレに連れて行くようにして、トイレで排泄できるチャンスを増やす
- 排泄できたらたくさん褒めて特別なおやつをあげるなど、犬にとって「この場所で排泄すると良いことがある」という経験を増やしていく
- トイレの場所をなかなか覚えてくれない場合は、しつけ用のスプレーなどのグッズを使ってみる
まとめ
トイレのしつけの習得スピードには個体差があります。焦らずに成功したら褒め、失敗は静かに片付けて根気よくトレーニングを続けましょう。
なかなかトイレの場所を覚えてくれない場合は、しつけ用スプレーなどのグッズを使ってみるのもひとつの手段です。また、トイレ本体や場所、環境を見直してみることも必要です。
もし「今までできていたのに急に失敗するようになった」という場合は、身体の不調(痛みや違和感)が原因かもしれません。
不安な点があれば、まずはトイレの環境を見直し、必要であれば専門家や動物病院へ相談することをお勧めします。