【獣医師監修】猫の死因トップ!?「慢性腎臓病」から愛猫を守るための予防・早期発見の徹底ガイド

【獣医師監修】猫の死因トップ!?「慢性腎臓病」から愛猫を守るための予防・早期発見の徹底ガイド

腎臓病、とくに慢性腎臓病(CKD)は、猫にとって避けては通れない宿命とも言われる疾患です。高齢になると特に発症率が高くなり、猫の死因のトップを占めている怖い病気です。
慢性腎臓病は一度発症すると完治することはなく、進行を遅らせ、猫の生活の質(QOL)をできるだけ保つことが治療の主体となります。そのため、慢性腎臓病は「いかに早期発見するか」が重要なポイントとなります。 本記事では、慢性腎臓病の症状、予防と早期発見など、飼い主さまができる管理やサポート方法について解説します。

目次

猫の腎臓病とは?

腎臓は、血液中の老廃物をろ過して尿として排出するだけでなく、血圧の調節、造血ホルモンの産生、体液バランスの維持など、生命維持に不可欠な役割を担っています。
腎臓がダメージを受けて十分に機能しなくなる状態を腎臓病といいます。

猫の腎臓病には、「急性」と「慢性」の2種類があります。

突然発症する「急性腎障害(AKI)」

  • 数時間〜数日のうちに急激に悪化するため、直ちに動物病院へ連れて行くことが必要です
  • 有毒物質の摂取(ユリ科の植物、不凍液、ブドウ、一部の薬物)、重度の脱水、尿管結石による閉塞、感染症などが原因で発症します。
  • 早期に適切な集中治療を行えば、腎機能が元通りに回復する可能性があります。

時間をかけて進行する「慢性腎臓病(CKD)」

  • 数ヶ月〜数年単位で、じわじわと進行します。
  • 加齢、遺伝、過去の腎ダメージの蓄積、慢性的な炎症などが原因で発症します。
  • 二度と元には戻らないため、治療のゴールは「治すこと」ではなく「進行をいかに遅らせ、今の生活を維持するか」になります。

本記事では、慢性腎臓病について解説していきます。

何歳から注意が必要?年齢別の発症リスク

猫の慢性腎臓病の発症リスクは加齢とともに飛躍的に高まります。
近年の研究では、血液検査で異常が出る前の「隠れ腎臓病」を含めると、高齢猫のほとんどが何らかの腎機能低下を抱えていると考えられています。

年齢層 推定罹患率 獣医師のアドバイス
8歳前後 約3〜5% 発症率が上がり始める
10歳前後 約10〜15%以上 年1回以上の定期健診が必須
15歳以上 約30〜80%以上 加齢に伴いほとんどの猫が罹患。半年に1回以上の健診を推奨

慢性腎臓病の症状:見逃してはいけないサイン

慢性腎臓病の恐ろしさは「沈黙の病」であり、早期発見が難しいことです。腎機能の約70%が失われるまで目立った症状は現れないため、気がついた時にはかなり腎臓の機能が低下していることがあります。
元気に見える場合でも、定期的に健康診断を受診しましょう。また「今までよりもたくさん水を飲みたくさんおしっこをするようになった」と感じたら、すぐに動物病院で診てもらうようにしましょう。

初期〜中期

  • 多飲多尿:最も重要なサイン。水分が尿として過剰に出ていくようになるため、必要な水分を補おうと水を飲む量が増え、尿の色が薄くなる。
  • 体重減少:栄養の吸収効率が落ち、筋肉量が減少する。
  • 食欲不振、嘔吐:食べ物の選り好みや、途中で止める(吐き気の影響)といった行動が見られる

進行期〜末期症状

老廃物を排出できなくなり、尿毒症によるさまざまな症状が発生するようになります。

  • 消化器症状:食欲不振、嘔吐、下痢、尿毒症性の胃炎や口腔潰瘍
  • 口臭(アンモニア臭): 血中尿素が唾液中に分泌され、細菌により分解されることで特徴的な臭いを発する
  • 粘膜(歯茎や耳の内側)の蒼白: エリスロポエチン不足により赤血球が作られず、貧血により歯茎や耳の内側の色が白くなる。無気力や運動不耐性が生じる。
  • 神経症状:毒素蓄積(尿毒症性脳症)や低カリウム血症、あるいは重度高血圧による発作、失明、虚弱、首下がり姿勢

慢性腎臓病の治療とケア

慢性腎臓病により破壊されてしまった腎臓の組織は、治療により再生することができません。そのため、治療は血液中の老廃物や毒素を体内に溜めないようにすることや、病気の進行を遅らせることが主体となります。

水和補正(脱水の改善)

腎機能を維持し、病気の進行を遅らせるために最も重要かつ基本的な治療・ケア。腎機能が低下すると尿を濃縮できなくなり、多尿となって慢性的な脱水に陥りやすくなるため、外部からの水分補給が不可欠です。

  • 飲み水・食事による水分補給:積極的な水分摂取により、脱水を予防
  • 点滴(静脈点滴・皮下点滴):脱水を予防し、体内の毒素排出を助ける

食事療法

  • リン:腎機能を悪化させる最大の要因であるリンの摂取量を制限する
  • タンパク質:制限しすぎず、消化に良い高品質なタンパク質を適量摂取させる

各症状にあわせた療法

  • 高血圧:血管保護、拡張剤、降圧剤(プロスタサイクリン製剤)
  • 高リン血症:体内のリンを便と一緒に排出させる
  • 吐き気:吐き気どめ
  • その他:サプリメントや幹細胞上清液点滴など

慢性腎臓病を予防するには

水を飲みやすい環境

腎臓への負担を軽くするためには、毎日、新鮮な水を飲ませることが重要です

  • 飲み水は1日1回以上交換し、常に新鮮な状態を保つ。
  • 常に新鮮な水を複数箇所に設置する。
  • ドライフードを与える際、新鮮な水をあわせて飲ませる。
  • 自動給水器や器の種類を猫の好みに合わせて飲みやすくする。
  • 飲み水以外でも、ウェットフードやささみのゆで汁などを活用して水分摂取量を増やす。

塩分・リンの過剰摂取を避ける

リンは本来、骨や歯を作る大切なミネラルですが、過剰に摂取すると腎臓に致命的なダメージを与えます。また、猫は人間のように汗をかいて塩分を排出できないため、過剰な塩分は高血圧につながります。
猫の腎臓を守る上で、塩分の多い人間の食べ物や、リンの多いおやつの過剰摂取を避けることが大事です。

リンの多いおやつ

乳製品(チーズ、牛乳)、魚介類・加工品(煮干し、干しエビ、かつお節、ちくわ、かまぼこ)、肉類(ジャーキーなど)

歯みがきを習慣にして歯周病を予防

「腎臓病」と「歯みがき」は一見、何の関係もないように思えるかもしれません。けれども、最近の研究では、ステージが中〜重度の歯周病があると、慢性腎臓病になるリスクが1.5倍になるという報告があります。
歯周病菌は血流に乗り、腎臓に到達して腎機能を低下させてしまうからです。
猫の場合、食べかすは食後24時間以内に歯垢になり、約1週間で歯石になると言われています。こまめに歯みがきをして歯垢を溜めないことが歯周病の予防となり、結果的に腎臓病のリスクを減らすことにつながります。
1日1回歯みがきができれば理想的です。

食事のバリエーションを増やしておく

慢性腎臓病を発症した場合には、適度にタンパク質とリンを制限した食事療法が必要になる場合も多く、「これしか食べない」という状態では治療に支障を来すことにもなりかねません。いろいろなキャットフードに慣らして、食べられるもののバリエーションを増やしておくことも大切です。ドライもウェットも食べられるとフードの幅が広がります。

慢性腎臓病の早期発見のためにできること

慢性腎臓病は、腎臓の約70%が機能しなくなった状態ではじめて目に見える症状が現れます。つまり、「いかに早期発見するか」が重要なポイントになります。
早期発見のために、「初期症状を意識してチェックすること」はもちろん、元気な状態であっても定期的に健康診断や検査を受けましょう。

定期的な飲水量チェック

飲水量と尿量は連動していて、腎機能が低下すると尿が濃縮されなくなるため量が増え、水分がどんどん排出されて体が脱水するために水を飲む量も増えていきます。 猫の1日の飲水量の目安は健康状態や年齢、生活環境などによっても異なりますが、【体重1kgあたりおよそ50ml程度】です。飲水量が増える病気は慢性腎臓病以外にもあり、日常的に目安以上の量の水を飲んでいる場合には何らかの病気の可能性が考えられます。

定期的な尿チェック

尿のチェックポイントは色・量・回数・ニオイです。尿が濃縮されずに量が増えると、色が薄くなりニオイもあまりしなくなってきます。この変化をより正確に把握するためには、尿を液体の状態で直接確認することが重要です。
特に7歳を過ぎたら、血液検査だけでなく自宅での尿チェック(量や色)を習慣にしてください。

定期的な健康診断

血液検査や尿検査だけでなく、画像検査(エコー検査など)も含めた総合的な健康診断を定期的に受診し、腎機能の状態変化を継続して確認していくことが大切です。
愛猫が高齢になったら、今まで健康に問題がなかった場合でも、【半年に1回以上】の定期的な健康診断で管理しましょう。

まとめ

猫にとって慢性腎臓病は加齢とともに発症しやすく、避けては通れない病気と言われています。
しかし今まで説明してきたように、飲み水や食事管理による予防や、定期的な受診により愛猫がまだ元気なうちに早期発見できるこが非常に重要です。そのためには、飼主さまが日頃から愛猫の健康状態をチェックし管理を続けていただくことがポイントとなります。 大事な猫ちゃんの健康を守り、末永く健やかな日々を過ごしていくため、本記事を参考に、日々の飲水量・尿チェックから始めてみてください。

監修

渡邊 遥 先生

おうち de ペットクリニック

2015年日本大学卒業、獣医師免許を取得。4月より横浜市の動物病院で小動物臨床に従事。
その後ペット関連企業での研究開発や商品開発、グループ動物病院の運営に従事し、様々な視点での犬猫の生活・診療に携わる。

2022年に福岡県内で往診専門動物病院を開院し、在宅動物医療にあたる。また、「どうぶつとの社会は、人を豊かにする」をテーマにペット関連事業者のサポートやペット業界での講演や執筆など幅広く活動を行う。

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