愛犬のための関節炎ケアガイド。関節をケアしQOLを維持するために

愛犬のための関節炎ケアガイド。関節をケアしQOLを維持するために

愛犬が関節炎を患うことは、飼い主にとって大きな不安の種です。しかし、犬は本能的に痛みを隠すため、「年のせい」と見過ごされがちです。

関節炎は進行性の慢性疾患であり、完治は難しいものの、早期発見と適切な管理によって痛みを和らげ、愛犬の生活の質(QOL)を高く保つことが可能です。このガイドを参考に、愛犬の関節を守るための知識を深めましょう。

▼目次

1. 犬の関節炎とは?

犬の関節炎は、骨と骨をつなぐ関節の組織(主に軟骨)に炎症が起こる病気です。

健康な関節では、関節軟骨と関節液がクッションとなり、骨同士が滑らかに動くように保護しています。しかし、この軟骨がすり減ったり変性したりし、炎症が発生してしまいます。結果として、骨同士が直接こすれ合うようになり、慢性的な痛みと機能障害を引き起こします。

2. 気づいてあげたい!愛犬の症状サイン

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犬は痛みを言葉で訴えられません。以下の行動や動作の変化は、関節炎の重要なサインです。一つでも当てはまる場合は、獣医師に相談しましょう。

動作の変化(特に注意が必要なサイン)

  • 歩き方がぎこちない: 足を引きずる、特定の足をかばう、小刻みに歩く。
  • 立ち上がりの困難: 特に朝起きた後や、長時間寝ていた後に、立ち上がるのをためらう、ゆっくりになる。
  • 段差を嫌がる: 階段の上り下りや、ソファ・車へのジャンプを避けるようになる。
  • 活動性の低下: 散歩に行きたがらない、散歩中に座り込む、遊びに消極的になる。
  • 触られるのを嫌がる: 腰、膝、肘など、特定の関節を触ろうとすると嫌がったり、怒ったりする。
  • 季節の変化による悪化: 寒い日や気圧の変化がある日に、痛みが強く出やすい。

3. 関節炎の主な原因とリスク因子

関節炎は単一の原因で発症することは少なく、複数の要因が絡み合って進行します。

リスク因子 概要
加齢筋力の低下 長年の関節への負担が蓄積し、軟骨の摩耗が進みます。最も一般的な要因です。長期の入院、疾患による痛みなどで運動不足になることで、四肢の筋力が低下し、体重を筋力で支えづらくなることで関節に負担をかけます
肥満 体重が増加すると、関節にかかる負担が2倍以上に増え、軟骨の損傷を早めます。
犬種・遺伝 股関節形成不全や膝蓋骨脱臼(パテラ)など、先天的な関節疾患を持つ犬種(特に大型犬や小型犬の一部)はリスクが高いです。
外傷・既往歴 過去の骨折や靭帯(じんたい)断裂などの怪我が、関節の不安定さを生み、炎症につながります。
生活環境 滑りやすいフローリングや、頻繁な段差の上り下りは関節に過度な負担をかけ続けます。

4. ご家庭でもできる予防と対処

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関節炎の治療は、「痛みの緩和」と「進行の抑制」が目的です。病院での治療と、飼い主による日々の丁寧なケアを組み合わせて行います。

4-1. 最重要:体重管理と食事

肥満は関節への負担を増大させ、痛みを悪化させる最大の敵です。予防としても餌の与え過ぎには要注意が必要です。

  • 適正体重の維持: 獣医師と相談し、愛犬のベストな体重を把握し、それを維持します。
  • 食事の見直し: 食事量を正確に計量し、上げすぎには十分注意しましょう。
  • サプリメントの給与:サプリメントでは関節の炎症を抑えたり、関節の健康維持に必要な成分を給与することができます。必要に合わせて検討しましょう。

4-2. 快適な環境づくり

日々の生活環境を整えることで、関節への不要な負荷を減らします。

  • 滑り止め対策: フローリングやタイルなどの滑りやすい床には、カーペットや滑り止めマットを敷き、足が踏ん張れるようにしましょう。
  • 段差の解消: ソファやベッドへの昇降用にスロープやステップを設置し、ジャンプを避けます。
  • 保温: 寒さは痛みを悪化させるため、冬場は暖かい寝床を用意し、必要に応じて服を着せるなどして、体を冷やさないように気をつけましょう。

4-3. 適度な運動と休息

痛いからといって全く動かなくなると、筋力が低下し、かえって関節への負担が増してしまいます。

  • 運動量の調整: 獣医師と相談し、愛犬の痛みのレベルに合わせた「適度な運動」を心がけます。
  • 推奨される運動: ゆっくりとした短い散歩(例えば1回15分を1日2~3回に分ける)や、土などの柔らかく平坦な道での散歩、水泳などの関節に負担の少ない運動。※犬種により適切な運動時間は変わります。
  • 避けるべき運動: 激しい運動、急な方向転換、ジャンプでの上り下りなど。

4-4. 動物病院での療法

健康状態に少しでも気になる点がある場合は、「早いうちに動物病院で診察を受けること」をおすすめします。愛犬の痛みや不安を最小限にし、適切な対応を早期に始めるためにも、病院で獣医師にご相談することもぜひご検討ください。

5. まとめ

犬の関節炎は、飼い主の気づきが愛犬の未来を大きく左右する病気です。「歳だから仕方ない」と諦めずに、愛犬の行動を注意深く観察し、適切な体重管理、生活環境の整備、そして獣医師と連携した治療を継続することが、愛犬の快適なシニアライフを支える鍵となります。

監修

渡邊 遥 先生

おうち de ペットクリニック

2015年日本大学卒業、獣医師免許を取得。4月より横浜市の動物病院で小動物臨床に従事。
その後ペット関連企業での研究開発や商品開発、グループ動物病院の運営に従事し、様々な視点での犬猫の生活・診療に携わる。

2022年に福岡県内で往診専門動物病院を開院し、在宅動物医療にあたる。また、「どうぶつとの社会は、人を豊かにする」をテーマにペット関連事業者のサポートやペット業界での講演や執筆など幅広く活動を行う。

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